食品における乳酸菌
乳酸菌は、さまざまな醗酵食品の製造に用いられてきた。
主なものとしては、ヨーグルトや乳酸飲料などの醗酵乳製品、キムチや浅漬け、ピクルス、ザワークラウトなどの醗酵植物製品、鮒寿司などのなれ寿司などが挙げられる。
乳酸菌による醗酵は、これらの食品に酸味を主体とした味や香りの変化を与えるとともに、乳酸によって食品のpHが酸性側に偏ることで、腐敗や食中毒の原因になる他の微生物の繁殖を抑えて食品の長期保存を可能にしている。
一方、他の醗酵食品の製造過程において、乳酸菌が雑菌として混入することが問題になることもある。
ラクトバシラス属のL. fructivorans、L. hilgardii、L. paracasei、L. rhamnosusなど、アルコールに強い乳酸菌は、酒類の醸造、醗酵中に混入・増殖すると、異臭・酸味を生じて酒の商品価値を失わせてしまう。
日本酒醸造の現場ではこれを火落ちまたは腐造と言い、これらの菌は『火落ち菌』として造り酒屋たちから恐れられている。
また火落ちにより混入した乳酸菌によって醸造後に腐敗することを防止するため、醸造した酒を70℃前後の温度で処理してこれらの菌を殺菌する、「火入れ」と呼ばれる低温殺菌法が経験的に編み出され、江戸時代頃から行われている。
ワインにおいても同様に保存中に乳酸菌醗酵によって異臭や酸味を生じることがあり、その原因を究明しようとしたルイ・パスツールの研究によって、食物が腐敗するメカニズムが解明され、またパスツリゼーションと呼ばれる低温殺菌法の発明につながった。
